DMTea Ceremony Case

アヤワスカ茶が争われている最初の裁判

茶禅一味 ー第二回公判ー

京都。西暦2020年、仏暦2563年7月20日



今日も京都は暑い。

私は、ボディーチェックを受けて、裁判所に入った。法廷では、iPhoneを使って録音することは禁止されている。



裁判長が開廷を宣言した。

検察官が罪状を読み上げた。

「被告人は京都で茶会を催した。茶会の後、被告人から採取された尿をクロマトグラフィーで分析した結果、麻薬及び向精神薬取締法別表第一で定める麻薬、三、二、ジメチルアミノ、エチル、インドール、別名、DMTが検出された」

次に、裁判官は、被告人に、罪状認否を求めた。

「あなたには、黙秘権があります。あなたは、言いたいことを言わない権利があります。しかし、あなたが言ったことは、すべて裁判の証拠となります。これを、理解しましたか」

「はい。理解しました」

被告人は、すこし微笑んだ。そして立ち上がり、証言台に立った。


私は、私が茶会を催したことは、認めます。しかし、初公判でも主張したとおり、私は、その茶が、DMTという違法薬物であることは、争います。
   
しかし、そのDMT分子が、飲んだお茶に入っていたのか、自分が坐っているときに脳で生合成されたのか、それは、私にもわかりません。ある日、ふと私は、坐っているときに、脳内でDMTが合成されていることに、気づいたのです。
  
私は、クロマトグラフィーのような機材を持っていませんから、自分でも確かめようがありません。しかし、自分の脳の中で、DMTを味わうことができます。
  
茶と禅は同じ味がします。それを、どうやって区別したらいいのか、私にもわかりません。

検察官が苛立っているのがわかった。

彼女は、内因性DMTとは何であるのかが理解できないのか、あるいは、国家公務員が脳内に麻薬等を所持等していた場合の懲戒処分は、免職である[*1]ことを知って、それを恐れていたのかもしれない。

脳の中で内因性DMTを生合成したことがない者が、まず被告人に石を投げればよい[*2] ー私が裁判長だったら、そう言っただろうー

裁判長が、閉廷を宣言した。



このように私は聞いた。

これは、実際にあった事件をもとにして書かれたエッセイです。

*1:懲戒処分の指針について(平成12年3月31日職職―68)(人事院事務総長発)」『人事院

*2:これは「ヨハネによる福音書」8章7節の語句を、比喩として用いたものであり、聖書の言葉を意図的に歪曲したものではない。ギリシア語原文は「Nestle-Aland Novum Testamentum GraeceNovum Testamentum Graece: Nestle Aland 28th Revised Ed. of the Greek New Testament, Standard Edition」を参照した。