DMTea Ceremony Case

アヤワスカ茶が争われている最初の裁判

判決(京都地裁)

この記事は書きかけです。

京都地裁での判決は、西暦2022年9月26日、月曜日、13時20分から言い渡された[*1]

筆名、青井硝子被告に対し、実刑4年の求刑に対し、懲役3年、執行猶予5年の判決が下された。

Acacia confusa(ソウシジュ)など、DMTを含む植物は麻薬原料植物には指定されていないが、その植物の一部分をお湯に混ぜたことが麻薬の抽出にあたるか、という争点で議論されてきた裁判だった。ソウシジュを湯に溶かしたMedi-Teaを取り締まり、同じソウシジュを湯に溶かした染料を取り締まらないなら、それは罪刑法定主義における明確性の原則に反する、そういう理由で無罪判決が言い渡される可能性が高いと言われていたが、じっさいには有罪判決だった。

Medi-Teaを点てるさいには、ただ湯に溶かすだけではなく、液性を酸性にしてDMTの溶解を促し、服用するときにはMAOIであるモクロベミドを併用していた。これはDMTという物質の薬効を享受しようとするものであり、「保健衛生上の危害」(麻向法第一条)が生ずるおそれがある。ところが、沖縄で芭蕉布を染めるためにソウシジュを湯に溶かすのは、服用するためではないから、「保健衛生上の危害」を生ずるおそれはない。これが、Medi-Teaを麻薬として取り締まるべき理由として示された。

飲んで精神作用を得るために作られたものは麻薬であり、成分が同じでも飲まないものは麻薬にはならない、という論理は、常識的に理解できるものである。しかし、かりに服用を前提としないのであれば、高濃度のTHCを含む大麻にも保健衛生上の危害は生じないということになる。

弁護側は、この判決を「不当判決」としている。「保健衛生上の危害」が生ずるおそれがあるものを麻薬だと規制するとしても、その濃度や、モクロベミドなど他の物質と併用するなどの客観的な基準がなければ、「麻薬」として取り締まられる対象が恣意的なものになってしまう。

より注目すべきことは、裁判所が麻薬の精神作用を肯定的に評価したことである。

麻薬は疼痛の軽減等のために医療上極めて高い価値を有しているものの、中枢神経系に作用して精神機能に影響を及ぼす物質であることから、その濫用は社会全体に対して害悪をもたらすおそれが大きい。そこで、麻向法は、麻薬について、原則として、厚生労働大臣等から免許を受けた者でなければ製造、施用、所持等することを禁止しており、その禁止は同法の目的に照らして合理的なものである。したがって、免許を持たない被告人が、判示記載の各行為を精神疾患の治療等を目的とする宗教的な行為として行っていたとしても、正当行為として違法性が阻却されることにはならない。

被告人は、そのような中で、本件お茶等に精神的効用があると信じて本件各犯行に及んだのであるから、典型的な薬物犯罪とは一線を画する。

青井被告は大坂高裁に控訴した。控訴審は4月18日に大阪地裁で行われる。



以下はメディアの速報より抜粋。



DMTの精神作用という文脈とは別に、インターネット時代の新しい事件として注目する向きもあり、法律上の解釈としては、2004年から2011年にかけて争われたwinny事件と似ているとも言われている。
ja.wikipedia.org
インターネット上で安全合法という薬効を謳う植物が販売されていて、それを買って服用した人が被害に遭った場合、売った人を裁けるのかという問題提起である。

winny事件においては、京都地検winnyの開発者である金子勇さんを起訴、京都地裁での判決は有罪だったが、大阪高裁では逆転無罪、そして最高裁で無罪が確定した。



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  • CE2022/09/25 JST 作成
  • CE2023/03/31 JST 最終更新

蛭川立

*1:判決の全文は『薬草協会』のサイトの「裁判の行方」のページからダウンロードできる。